業務部の三浦です。

 エキタスという若者団体が最低賃金1,500円への引き上げを求めてデモを行ったとのこと。

・最低賃金の引き上げが経済に好影響云々・・・
・諸外国と比較して日本の最低賃金は云々・・・

という予備的主張はひとまず置いておくとして、どうやら「健康で文化的な最低限度の生活をすべての国民に保障しなければならないとする憲法25条への挑戦(※そのまま引用)」が主張の根幹らしい。
ただそれも、「1500円は、健康で文化的生活をするために必要な最低限の要求です。」と途中で表現を変えている。
「健康で文化的な最低限度の生活」と「健康で文化的な生活をするために必要な最低限の要求」とではニュアンスが違う。

これが原因なのかデモ参加者の声は・・・

・「1,500円なら夢がある」
・「最低賃金が1500円になれば、3食食べて8時間睡眠が可能」
・「最低賃金が1500円になれば、働く時間が減り勉強に集中できる」

憲法が保障する「最低限度の生活」とは乖離した主張に変容し、どうも統率が取れていない。
若者の集まりなので仕方ないが、ただでさえ批判を受けやすいこのような主張をする場合にはもうちょっと丁寧にやって欲しいと思う。

賃金額は「政策の影響」、「仕事の価値」、「需要と供給」、「交渉」といった様々な要素により決定される。
このデモに対する一般的な批判として「1,500円欲しいなら、1,500円に見合うだけの価値ある仕事をすべき」といったものが見受けられるがこれもあまり意味はない。

何故なら、主張の根拠が「憲法」なのだから。

では最低賃金の決定基準がどうなっているかというと

最低賃金法:(地域別最低賃金の原則)
第九条  賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障するため、地域別最低賃金(一定の地域ごとの最低賃金をいう。以下同じ。)は、あまねく全国各地域について決定されなければならない。
2  地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない。
3  前項の労働者の生計費を考慮するに当たつては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする。

なんだ、最低賃金は憲法25条を根拠に決められているのだ。

結局、これは「健康で文化的な最低限度の生活」の「程度」の議論なのだろう。
次の段階では憲法が保障する最低限度が「1,500円」にあるという主張を丁寧にやって貰いたいなと思う。

法律解釈は法律家の仕事。同じ土俵に上がるのは賢くない。
デモの影響力という意味では、若者の実生活をもとに臨場感をもって、「最低限」を表現することをお勧めしたい。