7月3日、政府は「成長戦略実行計画案」をまとめた中で、兼業・副業について、フリーランスについての記載を行いました。
今後の労働法制の変化の方向性が読み取れる内容ですので、ぜひご参照ください。
なお、主要な箇所を下記に転載しておりますのでご覧ください。(※テレワークの推進等の記載は第9章にあります)
第2章 新しい働き方の定着
1.兼業・副業の環境整備
兼業・副業を希望する者は、近年増加傾向にあるものの、他方、実際に兼業・副業がある者の数は横ばい傾向であり、働く人の目線に立って、兼業・副業の環境整備を行うことが急務である。
この背景には、労働法制上、兼業・副業について、兼業・副業先と労働時間を通算して管理することとされている中、「兼業・副業先での労働時間の管理・把握が困難である」として、兼業を認めることに対する企業の慎重姿勢がある。本未来投資会議の審議においても、兼業を認めると自社の労働力が減るにもかかわらず逆に管理工数が上がる中で、企業の労務管理責任の範囲・在り方についてしっかりとルールを整備し、企業が安心して兼業・副業を認めることができるようにすることが重要、との指摘がある。
このため、労働時間の管理方法について、以下の方向で、労働政策審議会における審議を経て、ルール整備を図る。
(1)労働者の自己申告制について
兼業・副業の開始及び兼業・副業先での労働時間の把握については、新たに労働者からの自己申告制を設け、その手続及び様式を定める。この際、申告漏れや虚偽申告の場合には、兼業先での超過労働によって上限時間を超過したとしても、本業の企業は責任を問われないこととする(※)。
(※)フランス・ドイツ・イギリスのいずれも、労働時間上限規制との関係では兼業・副業時の労働時間も通算することとしているが、その管理方法については、兼業・副業の有無やこれら
の労働時間について労働者に自己申告させることが一般的であり、自己申告していない又は虚偽申告を行った場合、本業の企業は責任が問われないこととなっている。
(2)簡便な労働時間管理の方法について
本業の企業(A社)が兼業を認める際、以下①、②の条件を付しておくことで、A社が兼業先(B社)の影響を受けない形で、従来通りの労働時間管理で足りることとなる。
①兼業を希望する労働者について、A社における所定の労働時間(※1)を前提に、通算して法定労働時間又は上限規制の範囲内となるよう、B社での労働時間を設定すること(※2)。
(※1) 「所定の労働時間」とは、各企業と労働者の間で決められる、残業なしの基本的な労働時間のことで、通常は、法定労働時間の範囲内で設定される。
(※2) B社において36協定を締結していない場合は、「A社における所定の労働時間」と「法定労働時間」の差分の時間内、B社で兼業可能。B社において36協定を締結している場合は、当該協定の範囲内で、「A社における所定の労働時間」と「B社の36協定で定めた上限時間」の差分の時間内、B社で兼業可能。
②上記の場合、A社において所定の労働時間を超えて労働させる必要がある場合には、あらかじめ労働者に連絡することにより、労働者を通じて、必要に応じて(規制の範囲内におさまるよう)、B社での労働時間を短縮させる(※)ことができるものとすること。
(※)B社の労働時間の短縮について、労働者から虚偽申告があった場合には、上限規制違反についてA社が責任を問われることはないこととする。
また、これにより、A社については、従来通り、自社における所定外労働時間(※)についてのみ割増賃金を支払えば足りることとなる。
(※)企業によっては、所定の労働時間を法定労働時間より短く設定し、所定外労働時間であっても法定労働時間内であれば割増賃金を払わないこととしている場合もあるが、その場合は法
定労働時間を超える部分。
2.フリーランスの環境整備
(4)労働者災害補償保険等の更なる活用
フリーランスとして働く人の保護のため、労働者災害補償保険の更なる活用を図るための特別加入制度(※)の対象拡大等について検討する。また、フリーランスとして働く人も加入できる共済制度(小規模企業共済等)の更なる活用促進を図る。併せて、フリーランスとして働く人のリモートワーク環境の整備を支援する。
(※) 労働者以外の者のうち、業務の実態、災害の発生状況等から見て、労働者に準じて労働者災害補償保険により保護することがふさわしい者に、一定の要件の下に同保険に特別加入する
ことを認めている制度。
■成長戦略実行計画案 令和2年7月3日
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai40/siryou1-1.pdf