業務部の松井です。
大阪府社会保険労務士会の特定社労士部会の部員として、1月の終わりに研修のお手伝いをしてきました。
ここ数年で「パワハラ」を含む「いじめ・嫌がらせ」をめぐる紛争が増加の一途をたどっております。
また都道府県労働局に寄せられる平成22年度の民事上の相談件数も、「普通解雇」に次いで2番目に多い件数となってきております。
しかも、「普通解雇」の件数は前年比8%減であるのに比べ、「いじめ・嫌がらせ」の相談件数は前年比10%増であるため、このままだと普通解雇の件数を逆転する可能性もあります。
このような状況を受けて、厚労省でも「職場のいじめ・嫌がらせに関する円卓会議」を設置し、パワハラの法令化にむけての動きも出てきております。
今回は特定社労士が5~6人ずつ8つのグループにそれぞれ分かれて、事例をもとに議論し、発表いたしました。
事例は、「勤務成績不良により離職した労働者がいじめや嫌がらせを受けたとしてあっせんを申請した」というタイトルで、具体的な背景と事
実に基づいて、
1.パワハラの定義
2.パワハラの該当性
3.パワハラの非該当性
4.本件うつ病診断とパワハラの関連性
5.事業主不利とした場合の和解案とその論理構成
6.今後パワハラを予防・解決するために事業主が雇用管理上講ずべき措置の検討
以上6つの検討事項をグループ毎に議論し、グループ毎に和解案とそのような和解案にした理由を発表しました。
出席者は特定社労士のメンバーばかりですので、専門家の集まりの中、様々な意見が出て、議論が交わされました。
我々社労士が顧問先事業所の経営者の皆様から、「従業員をきつく叱るとすぐにパワハラととられないか不安である」どのような点に注意すべきか教えてほしい、といった質問をたまに受けます。
まず一般的なパワハラの定義につきましては、厚生労働省第5回「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキンググループ」の配布資料によりますと、「パワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場の環境を悪化させる行為をいう」となっております。
業務上の指導との線引きが難しいところでありますが、パワハラは業務上の適正な指導とは異質な、業務の適正な範囲を超える行為を指します。
個人の受け取り方によっては、業務上必要な指示や注意・指導に不満を感じたり、苦痛を覚えたりすることもあり得ますが、業務の適正な範囲で行われている場合には、パワハラには該当しないということになります。
つまり先ほどの経営者からの質問の回答としては、「注意・指導・叱責は、身体的な攻撃や精神的な攻撃をしない限り、すぐにパワハラとなることはない」と言えます。
今後パワハラにつきましては、経営者の皆様は更なる関心を持っていっていただく必要があります。