業務部の三浦です。

 
 いわゆる〝アベノミクス″によって政権交代後の株高および円高抑制が進んでおり、「見かけの経済」は回復の兆しにあります。このタイミングで各大手企業はこれから続々と春闘を迎える訳ですが、経団連の米倉会長はベアを「実施する余地はない」とし、定昇についても延期や凍結の可能性を示しています。

 
 これに対し安部政権は夏の参院選に向けて「景気回復、雇用改善、所得アップ」をなんとか演出しようと、人件費の上昇に対する法人税の減税策等を材料に使用者側に賃上げ圧力をかけ、連合の「給与総額の1%増」という目標を後押ししているようです。

 
 ところが、ご存じのとおり本年4月から2025年にかけて段階的に65歳までの高年齢者の継続雇用義務化が始まります。これまでも継続雇用は義務化されていた訳ですが、労使協定による再雇用者の選別が出来なくなり、年金の支給開始年齢の繰り上げによりこれまで以上に再雇用を希望する従業員が増え、これからの企業の人件費負担の大幅増が目に見えています。将来的にはパートタイマーの社会保険への加入義務(企業の社会保険料負担増)も予定されています。つまり、各企業は従来の賃金カーブを見直さなければならない時期に来ていると考えます。

 
 春闘は近時の決算の結果を受けて行われるものであり、現状の景気はあくまで〝不況″であることに何ら変わりはありません。

 
 好況期には将来的な収益増を見込んでそれを賃金交渉に織り込むこともありますが、不況下においてはあくまで事前管理の賃金コントロール(総額人件費管理)により行うべきであり、上場企業とはいえ多くの企業はベアは勿論、定昇すら困難というのが実情ではないでしょうか。

 
 ここで先行して積極的な賃金施策を断行し雇用環境の改善から景気回復を演出するという考え方も1つにはあるのでしょうが、原理原則として不況下の賃金施策は「投資」ではなく「対価の支払い」に準拠すべきであり、景気判断を見定める意味も含めて本春闘は定昇維持程度に留め、真なる景気判断と賃金カーブの再検証を含めて本格的な賃金交渉は次年度に繰り延べるべきというのが基本線ではないでしょうか。

 
 それが結果として労使双方のHAPPYに繋がると個人的には思います。