業務部の三浦です。
労働災害防止の先覚者であるハインリッヒは、過去の多くの労働災害を分析した結果、「1:29:300」と言われるハインリッヒの法則を導き出しました。
これは1つの重大災害の裏には、29の軽傷(いわゆる赤チン災害)があり、その裏には300のヒヤリハット(ヒヤっとしたり、ハッとするような危ない出来事)の事実があるということを教示されたものです。
つまり、重大災害の発生を抑制するためにはまずヒヤリハット事例に注目し、その原因を探り防止策を講ずることが重要だと説いています。
これは経験上、労働災害だけでなく労務問題の領域でも同じことが言えるのではないかと私は思います。
訴訟に発展するような重大な労使紛争が1回起こる裏には、29の労使トラブルがあり、更にその裏には300の労務上のコジレがあるように思います。
ただ、労働災害のヒヤリハットと違い、労務問題のヒヤリハットは使用者(もしくは労働者)がその事実に気づいていないことが多いです。(つまり、問題であることに気づかずヒヤっとしたりハッと出来ていないということです。)
一例を挙げれば、使用者が労働者に対して安易な気持ちでかけた一言が労働者の感情を傷つけ、もしくは労働者が面倒だからと怠った1つの報告の漏れが使用者の信用を損なわせることがあります。
このようなことが怒らないように円滑な労使関係を築けるよう使用者に対して適切な助言し、労働者に教育を行う(もしくは会社の行う教育を支援する)ことが、我々の重大な職責の1つであると考えています。
そのためには机上の理論だけでなく現場の多くの労務トラブルに当事者意識で 『日常的に』 直面し、経験値に基づいた事案毎の最適解をタイミング良く提案できる準備をしておかなければなりません。
中小企業が安全対策にあまりコストと時間をかけられないのと同じように、予防労務の領域は個別労使紛争の解決と違ってその効果が「誰にとっても明白」ではなく、「確実なものではない」ためその価値を正しく理解して頂くのに苦労します。
しかし良く考えれば起こった問題を解決するよりも、問題が起こらないような体質を構築することの方が遥かに価値のあることではないでしょうか?
その領域にこそ我々の能力の差が如実に現れるものであり、経験豊かな当協会各担当者の能力は顧問先企業の発展に良い影響を与えるものと確信しております。