業務部の木村です。
先日、「管理職って大変だなぁ・・・」、とつくづく思う労働判例を目にしました。
その事件の概要はこのような内容です。
ある部門で同じ業務に従事するAさんとBさんは常にペアで仕事をしていました。Bさんは協調性に問題があり、顧客や社内メンバーとコミュニケーションがとれないこと等があったため、そのことについてAさんは上司のC部長に繰り返し状況報告し、その改善を求めていました。
あるとき、Bさんの顧客対応は問題がある旨を指摘して批判したメールを、Aさんが社内の関連部門の全員を宛先に加えて送信したところ、BさんはC部長に対して、Aさんの行為はパワハラだと訴えました。すると、今度はAさんがC部長に対して、Bさんと一緒に仕事をするのは不可能だとする訴えを繰り返しました。
完全に板挟みですね・・・
そんなこんなで、C部長はおもだった対応をとっていなかったところ、何らの改善に動かない状況を見て、結局Aさんは退職することになりました。
C部長としては、ひとまずやれやれ、といったところだったのでしょうが、そこで問題は終わらず、なんとAさんが「会社は自分が働きやすい職場環境を整える義務を怠った」として、会社に対して裁判を起こしました。
裁判の結果、会社はAさんに対して債務不履行責任又は不法行為責任に基づく損害賠償義務を負う、と判断しました。
裁判所の判断の中では、「会社は労働者に対し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して心身の健康を損なうことがないように注意する義務を負う」という前提のもと、「2人体制で業務を担当する他方の同僚からパワハラで訴えられるという出来事は、客観的にみてもAさんに相当強い心理的負担を与えたというべきである」とし、会社は具体的にAさんかBさんを配置転換して分離したり、両人の業務上の関わりを極力少なくするなどの対応をする必要があった、としました。C部長がこのような対応をしなかった以上、C部長がAさんの心理的負荷が過度に蓄積することがないよう注意して指揮監督権限を行使していなかった、という落ち度を指摘しました。
この記事をここまでお読みいただいたみなさん -特に管理職のみなさん- 、いかがですか?
相当シビアな内容ですよね。。。
具体例として挙げられた配置転換や関わりを少なくするなどの対処は、中小企業であれば現実的に無理なケースも多くあると思います。
この判例を踏まえて、今後どのように対策をとるかはさておき、管理職のみなさんとしては、まずは「部下の小さな声も聞き逃すな、放置するな」ということを肝に銘じておく必要がありそうです。