淀川労務協会 業務部の三浦 です。
大学時代に人事労務管理を専攻していたのですが、授業毎に少し風変りな人事制度を構築している企業を毎回1社とりあげ考察する講座がありました。
その中でも特に印象に残っている「株式会社 ミスミ」(以下、ミスミ)の事例をご紹介させて頂きます。
現在の制度は少し状況が変わっているかもしれませんがご容赦ください。
ミスミは東証一部上場のFA・金型用部品の専門商社なのですが、自らを購買代理商社と位置付け、刻一刻と変化するユーザーニーズに対応するために新しい取り組み及びその成果を上げることを「是」、自社都合優先や保守を「否」とする企業文化を経営者の強力な信念とリーダーシップにより実現してきた企業です。
ミスミではまず取締役や監査役を相手に幹部社員が次年度のビジョンやフレームワークをプレゼンテーションします。事業企画がバッティングした場合には提案者同士のコンペが行われ、勝った者がその事業を率いることが出来ます。これを「ユニットリーダー」と言います。
ユニットリーダーは承認を受けた事業計画を社内で公表し、「チームリーダー」を公募します。ユニットリーダーが事業計画を立案するのに対し、チームリーダーが立案するのは実行計画です。
最後にチームリーダーが実行計画をプレゼンし「チームメンバー」を公募・選出することにより社内に多数のチームが形成されます。
面白いのがこのチームリーダーやチームメンバーの公募対象は社内に留まらず、社外から応募してきた者がコンペに勝ち入社するケースもあるそうです。
現在のミスミのHPを閲覧しましたが、「がらがらポン」という制度名称の下に、2年に一度、メンバーは自分の行きたいチームを選びその上司と直接面談を行い、その上で、お互いが納得すれば、そのチームへ異動することができるとのことです。
・・・とツラツラと字面で書くのは簡単ですが、実際に業として人事労務に携わるようになってから、これを実践し堅調な業績を維持し続けることの偉大さをヒシヒシと感じます。
ミスミの成功のポイントは2つあると思います。
1つは「ゴーイングコンサーンを実現するためには変革し続けること」という「良く耳にする言葉」に対する経営者の「真なる信念と覚悟」がある。
もう1つはHRD(人材開発)ではなくOD(組織開発)という発想の下に制度が練られているということ。
変革が定着するためにはHRD(Human Resource Development)ではなくOD(Organizational Development)が必要だと言われています。
HRDは、基本的に、「誰かが誰かを作り変える」という発想に基づいており、いわば個人に対する対処療法的手法であり、定着させるためにはHRDを継続して定期的に繰り返さなければなりません。
一方でODは、組織に属する人の「動機」「価値観」「創意」や「人と人のかかわり合い」に焦点をあてながら、個人が他者に良い影響を与え続けられる仕掛け作りを行うことであり、繰り返さなくとも自発的に変革を継続します。
まさにミスミの事例です。
顧問先の社長様とお話をしている際、「社員が変わらない」という言葉を良く耳にしますが、果たして「社員が変わるためのファンダメンタル」を経営者は準備出来ているのでしょうか。
変わるのはもちろん従業員本人なのですが、特に今の若者の雇用管理を行う上においては「なんでそこまでしてやらにゃならん。ワシの若い頃は・・・(以下、略)」というもっともな思いを押し殺して、経営者は「火をつける努力」、「火が燃え続ける仕組みづくり」を考えなければならないのではないでしょうか。