業務部の木村(朋)です。

 先日、大阪市中央区にある印刷会社で働いて胆管がんになった16人(うち8人死亡)に対して労災が認定されたニュースが大きく取り上げられました。同社以外にも全国の47人(うち32人死亡)から労災請求があり、おそらくこれらも順次認定されていくのではないかと思います。

 たまたま印刷会社の顧問先様との打ち合わせがあったので、胆管がんの発症原因と言われている化学物質「1、2ジクロロプロパン」「ジクロロメタン」について聞いてみました。この化学物質は、印刷機のインクをふき取る洗浄剤に含まれていて、顧問先様でも昔に少しだけ使用していたことがあったそうです。印刷会社といっても、印刷工程によって分業していることが多く、顧問先様ではこの洗浄剤を使う必要のない印刷工程を請け負っているため、ほとんど使用していなかったそうですが、この洗浄剤を指で触れると、とても冷たくて、指先の指紋は一瞬で消えてしまうぐらいの危険なものだとのことでした。そんなものが身体の中に入ってきたと思うとおそろしいかぎりです。

 振り返って考えてみますと、顧問先様から日々お受けするご相談の中には、安全関係のものは比較的多くありますが、衛生関係についてはほとんど件数はありません。安全面はある意味、危険度合いが分かりやすく、かつ事故の結果も容易に想像がつくため、会社としても対策に力を入れますが、衛生面については目に見えないものが多いため、危険性の認識が乏しく、対策が疎かになってしまう現状があるよう思われます。しかし、一度発症してしまうと本件やアスベスト問題のときと同じように、命にかかわる重篤な病気になることがありえます。

 印刷業以外の会社においても、本件を教訓として、一度わが社の衛生対策が十分なのかをご確認されてはいかがでしょうか?