業務部の木村(朋)です。
今年に入ってから、社内で結核が発生したがどうしたらよいか?という相談を2件受けました。
みなさん、結核は昔の病気、という印象がないですか?私もそう思っていましたが、現在の日本の結核罹患率は2013年人口10万あたり16(約6,000人に1人)で、他の先進諸国の数倍の高さ、米国の1970年ごろの水準にあることから、日本は「結核中進国」と位置づけられているようです。意外ですよね。
そこで、前回のブログに引き続き、感染症の中の”結核”について、実際に社内で結核が発生したときにどの範囲まで結核発生の事実を社内公表するか?、という点についてお伝えしたいと思います。結核患者である従業員のプライバシーも配慮しないといけないだろうと思う反面、いちおう全従業員に状況を説明しておかないと、もし接触感染していたことが後で判明したときに「なぜ教えてくれなかったんだ」とクレームを受けてしまうかもなど、どうしたらよいのか分からなくなりますよね。
まず、咳が続いて治らないなどの症状がある従業員が病院で受診して結核だと診断された場合は、直ちに医師から保健所に届け出が行われます。この届け出をもとに、保健所が本人に連絡を取り、状況の聞き取りなどの対応が始まります。結核には人に感染するタイプ(排菌)と感染しないタイプがありますが、排菌タイプと診断され、かつ本人からの聞き取りの中で社内で接触者がいると想定される場合は、保健所から会社に連絡が入り、接触者と想定される者のリストアップを要請されます。具体的には「誰と・どこで・どのようなシチュエーションで」社内で接触したのか等について、結核診断から約3ヶ月遡って調査してリストアップしていきます。
このリストアップ作業は保健所の具体的な指示・指導に従って進めていきますので、原則として、どの範囲まで結核発生の事実を社内で公表するか、ということを会社が独自に考える必要はありません。保健所も感染症法にもとづき、結核患者の人権やプライバシーが最大限保護されるように配慮して事を進めていきますので、基本的には保健所の指示通りに動けば間違いないでしょう。ちなみに、リストアップされた全従業員が接触者健診の対象になるわけではなく、リストをもとに保健所と専門医師等の有識者がさらに範囲を絞り込んで健診対象者が決まりますので、従業員への負担も最小限度となります。
なお、保健所と連絡を取り合う場合、会社窓口を必ず設定する必要がありますので、事態に備えてあらかじめ窓口を決めておくことをお勧めします。